ここは片田舎・・・、日に船が一本向こう岸に行き来するだけのうら寂れた地方の一都市である。 もうもうと煙るのは、羊肉の串焼きを焼く煙。 屋台で売られるこの串焼きはカイエンヌ・ペッパーとも赤唐辛子ともつかぬ赤い粉香辛料を仕上げにこれでもかと振りかけ、日に一本の船に乗る為に山奥から出てきた人々の待ち時間の腹足しとなるのである。 この煙、羊肉を焼いているので、そばにいると煙が服に染み付きそうであるが、この片田舎でそのようなことを気にする人は誰もいない。。。 この羊肉を焼く人々は「シンジャン」と呼ばれる中国でもシルクロード最西方に住む人々。 イスラム教を宗教とするので、肉といえば羊肉。 この屋台の主は少し小金を稼いだのであろうか・・・屋台道具も立派である。 回教徒らしく、調理釜の煙突のてっぺんには三日月が付いている。ある種の芸術の匂いを感じるのは異国人である私だけであろうか。 シンジャンは貧しい地方の中でも特に貧困が深刻な地域と言われ、出稼ぎに来る人も多いのである。同じ中国人とは思えないほど彫りの深い顔立ちはトルコの気配をも強く感じさせる。もしくはモンゴル系の顔つきの人々も多く、異国情緒を掻き立てられる。 以前は船の渡し場の前の広場はバスターミナルであった。 バスターミナルと言っても、やはり日に2本のバスが停まるだけの空間であったが、とうとうバスも廃止されてしまった。。 廃止されたと同時に、目ざとく屋台のオヤジが簡易イスとテーブルを持ち出し、ここも村民の憩いの場となっているのである。それにしても、バスが廃止された途端にテーブルとイスを持ち出すとは、なんと言う抜け目のなさ、行動力であろうか。 こんな所でも田舎の中では、広い川沿いにあるということで、眺めを楽しむ為に山奥から観光気分でこの川沿いまで出てくる人もいるのである。 年に一回の春節の時のみ、過酷な労働から解放され家族団らんを楽しめる人々が束の間の楽しみを求めてやって来る。 その客目当てに屋台や小間物売りがひしめくのである。 このうら若き女性は、恋人を待っているわけではない。 中国人とひと目でわかるのは、両手をポケットに躊躇なくつっこんでいるからである。 寒さよけに華やかな帽子を・・・ではなく、この帽子は売り物でもあり、彼女自身がマネキンとなってかぶっているのである。 若いということは素晴らしい・・・年齢制限でかぶりたくてもかぶれなくなる、と思うのは私が日本人だからだろうか、それとも異国に来てセンチメンタルになっているからであろうか。。 それにしても・・・・一日にどれくらい売れるのであろうか。 一日の売り上げで、その日のご飯は買えるのであろうか。。 年齢制限など女性にはない、と思わせてくれたのは別の「彼女」だった。 やはり露店商売をしていた彼女であったが、何を売っているかを見る前に彼女に見とれてしまった。 中国人の人々は食事の時間に厳密であり、また食事を大切にする。正午になれば必ず食事を摂る。客商売であろうと、接客中であろうと食事は必ず店番をしながら摂るのである。 私に希望を与えてくれたのは彼女だった。 ねずみ年まで考えたこのセンス・・・、脱帽した。 これが中国の懐の深さである。 好きだなぁ、、中国。 創作 by pofumay ちなみにこの「片田舎」は我が家から徒歩5分の場所、後ろを振り返るとすぐ地上88階のビルを始めとする超高層ビル群が広がる一大金融街。上海市は「東洋のウォール街」を標榜しています。
by pofumay
| 2008-02-14 08:22
| 町の風景
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